コーディネーターの
スコット・シンプソンさん
チャンピオン・クオリティの証明として特筆しておきたいのは、フラットシーマーと呼ばれるミシンについて。これはチャンピオンのリバースウィーブ®の特徴である“滑らかな縫い目”には欠かせないマシーンで、フラットシーム、つまり平縫いができるミシンなんですね。1962年にアメリカのユニオンスペシャル社が開発し、その後生産が終了されたので、現存するモデルは希少なんですが、ここの工場ではちゃんとユニオンスペシャルが使われていました。このミシンで縫うと縫い目がフラットになるため、リバースウィーブ®の裏側が滑らかで肌に刺激を与えない縫い目になるんです。こうした製法によるチャンピオンのスウェットの着心地の良さは、是非一度着てみてご確認ください。
ユニオンスペシャルの
フラットシーマーで作業中
ワッペンの縫い付け
空環。これは後の工程で
切り落とされる
工場内作業風景
編集部 学生時代はチャンピオンのスウェットとか着ましたか?
カイヤ あのね、日本のスポーツウエアとアメリカのスポーツウエアには大きな違いがあります。それは裏側の肌触りなんです。アメリカ製のスウェットはとにかく素肌で着ても気持ちいい。確かに日本製はとてもしっかり作ってあるけど、肌はそんなに気持ちよくないんです。それはやっぱり、アメリカのコットンが柔らかくていいからだと思う。実際、ウチの子供たちもスウェットはわざわざアメリカ製を着たがる。彼らが欲しいのは、裏側の“柔らかさ”なんですよ。(monoマガジン2014年10月2日号より抜粋)
この裏側の柔らかさ、スムーズさが、チャンピオンのリバースウィーブ®の特徴なんですよね。カイヤさん、このときはとても熱く語っていらっしゃいました。
フラットシーマーについて、この工場取材とは関係ない情報なんですが、どうしても皆さんにお見せしたいものがあります。それは空環(からかん)あるいは縫い流しという、平面縫いで最後まで縫った後にほつれ止めのためにわざと付ける糸の延長のことで、現行製品ではほつれ止めの処理をしてカットしてありますが、フラットシーマが導入された初期のほんの一時期だけ、この空環が付いたまま製品化されたことがあります。空環付きのチャンピオンのスウェットはコレクター市場でも非常に珍しく、滅多に当時のモノを目にすることはないのですが、たまたま個人的に所有していた、コラボレーションの企画物で作られたスウェットが空環付きだったので、参考までに写真でお見せしましょう。
元イッセイミヤケのデザイナーだった
滝沢直巳さんが20年ほど前に製作した
チャンピオンとのコラボレーション・スウェット。
タグは5インチ四方を縫い付けた珍しい
60年代前半風のデザイン
(個人所有で現行製品ではありません)
わざわざ残してある空環(からかん)
工場での取材が終わりに近づいた頃、コーディネーターのスコットさんがポツリと漏らした言葉が印象に残っています。「アメリカ人は、青春時代をずっとチャンピオンを着て過ごすから、チャンピオンというブランドは僕らにとって特別な存在なんです」。