THE MASTER BOOK OF AUTHENTIC AMERICAN ATHLETIC APPAREL チャンピオン読本

The Master Book of AUTHENTIC AMERICAN STHLETIC APPAREL

monoマガジン編集局長が語る『チャンピオン読本 US取材後記』第五回
New York State of Mind / キャンパス・カジュアルの本音

7.New York State of Mind

Modell'sタイムズスクエア店
 ニューヨークは飽きない街です。多彩な情報に溢れ、その価値観は日々変化しています。異論はあるでしょうが、やっぱりニューヨーク(マンハッタン)は世界の中心。そのマンハッタンのタイムズスクエアはさらにその中心にあると思います。世界中から観光客が集まる場所ではありますが、この場所の価値観は“世界の平均値”に近いと思っています。最先端のトレンドから、どうしようもないB級カルチャーまで、すべてが混在しているからこそ平均値が測りやすいのではないでしょうか。
 取材班が訪れた「Modell's」というスポーツショップで興味深い話を聞きました。ニューヨーカーといえば、フィットネスやスポーツ志向のライフスタイル。早朝のセントラルパークでは、数多くのランナーたちが出勤前の汗を流しています。ですから「Modell's」のようなスポーツショップのメインは、やはりランニングシューズに機能系のスポーツファッションが売れ筋になるわけです。実際、マンハッタンの各店舗の売り上げは、そういったフィットネス系、ランニング系が上位を占めているという話を店員がしていました。しかし、タイムズスクエア店におけるチャンピオン・ブランドは、スポーツ志向と同じくらい、ライフスタイル&カジュアルのファッション系アイテムが売れているそうなんです。これはどういうことでしょうか? 

Modell's店内、チャンピオンコーナー
 まず、世界中からやってくる観光客はマンハッタンでアメリカで誕生したのアメリカンブランドを買いたいということ。ニューヨーカーとは消費の志向が違うのです。それから、チャンピオンというブランドの価値を、人々がどこに置いているのかという視点の違い。チャンピオンのブランドとしての存在感はやっぱり、アメリカンスポーツカジュアルの王道なんですね。
 「Modell's」のタイムズスクエア店では、最も基本的なアメリカン・ブランドらしい製品が売れている。これはつまり、世界の揺るぎなき価値観だと言えるのではないでしょうか。そしてその事実は、とてもチャンピオンらしいと思うわけであります。ニューヨークはやっぱり、アメリカンブランドの心の故郷を愛しているのです。
8.キャンパス・カジュアルの本音

イエールで見かけた学生。
まだ新入生か?
 1960~1970年代のアメリカは、学生たちによって多くの新しい価値観が生み出された時代です。思想も音楽もファッションも、この時代のアメリカ文化は世界中に影響を与えました。ご存じかどうか知りませんが、いま皆さんが普通に持ち歩くディパックは、雨の多いシアトルの学生たちの間で人気になって、それが全米の学生たちに新しいスタイルとして広まり、世界中に発信されたそうです。最初にシアトルの学生たちがディパックを買った場所、それは大学のブックストアでした。チャンピオンのウエアが大学のブックストアで人気なったのも、スポーツ部の学生が着ているのを見て、一般学生が欲しがったからだと言われています。アメリカに限ったことではありません。学校は流行の芽がそこら中にある場所なんです。
 取材班は今回のアメリカ取材で4つの大学のブックストアを訪問しました。最初に行ったのはロチェスター大学、それからIVYリーグの名門イエール大学とコロンビア大学、最後にニューヨーク大学です。ニューヨーク大学以外はすべて、全米最大の書店「バーンズ&ノーブル」がブックストアの経営をオペレートしていました。正確な数字は判りませんが、全米のほとんどの有名大学はバーンズ&ノーブルのブックストアらしいです。ですから、そこで売られているウエアも、大学のロゴやスクールカラーごとの違いはあれ、ほとんど同じアイテムが売られています。名門イエール大のブックストアでは、お客さんの多くは観光客だと言っていました。さて、ここで大きな疑問があります。果たしてアメリカの名門大学に通う学生たちは、大学のロゴ入りウエアを着るのでしょうか?

コロンビア大学
 それについてハーバード出身のタレント、パックンが面白い話をしてくれました。彼によると、大学の名称がバッチリ入った、つまりHARVARDとかYALEという文字があるウエアは、高学年になるに連れて着なくなるそうです。ただ、クラブやオフィシャルロゴだけの、よく見ないと大学名が判らないような、シークレット感のあるウエアは、逆に好んで着るそうなんです。そういえば、取材班がロチェスター大学のブックストアで話を聞いたとき、学生に人気なのは胸にエンブレムだけが入ったシャツやスウェットが人気だということでした。こういう感性、何となく理解できますよね。判る奴にだけ判ればいい、というスタンス。お揃いのユニフォームではなく、自分なりの個性の主張があるウエア。日本では逆に、大学名がちゃんと入ったウエアの方が人気だと言います。どっちがいいとか、悪いとかいう問題ではなく、お国柄による好みが、こうしたウエアのデザインにも表れるというわけです。